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振り向くな
これは、私が小学校低学年だった頃に体験した話です。
毎年お盆になると、親族が祖母の家に集まります。
小さかった私にとって、お盆は先祖が家に帰ってくる日で、従兄弟達と遊べる日としか思っていませんでした。
「栄太、中身を川に棄てておいで」
祖母に言われた父は食べ物や燃やした紙、強い酒が入った銀色のボールを持つと玄関に向かいました。
「お父さん、お出かけ?」
私は玄関で靴を履く父に何処に行くのと聞きました。
「麻琴はついてくるなよ」
「やだ。私も行く」
私は、川に向かう途中にあるコンビニでジュースを買ってほしくて駄々をこねました。
「叔父さん、私が麻琴を見てますから」
「ばぁちゃんが、早く行ってこいって。俺も行くよ」
従兄弟の御兄ちゃんと御姉ちゃんに急かされ、父は深い溜め息をつくと私の靴を靴箱から出してくた。
「いいか麻琴。俺がいいと言うまで、振り向くんじゃないぞ」
「振り向くなって、何で?」
「悪いものに連れていかれない おまじないだ」
あの時に、行くのをやめておけば良かったと後悔しました。
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