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日が傾きかけた空の下を、ゆっくり、ゆっくりと歩いているのは、どこにでもいそうな、平凡な少女だった。
綺麗な栗色の髪を後ろで三つ編みにして、可愛らしいワンピースを着ている彼女の足取りは、不自然なほどに重かった。
ゆっくり、ゆっくりと遠くを眺めつつ歩いては、時々、思い出したように足を止める。
そしてまた思い出したように歩き出すのだった。
丁度、秋が訪れようとしている季節の変わり目。
“景色を楽しんでいる”と言われれば納得できないことはないが、何かが違う。
決して足を引きずっているわけではないが、まるで何かを引きずっているような、そんな足取りだった。
彼女が変わらない足取りで歩いていると、突風が吹いた。
前髪が崩れないように右手で押さえながら、彼女は真っ赤な夕日の方へ視線を向けた――――。
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