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「まあ、先生の立場から考えれば、そうでしょうな」
おじさんのほうが、顎を撫でながら難しい顔で言う。
「我々も、話した感じでは矛盾点もありませんし、信用していいのかもしれない、というのが正直な印象です。…ただ…」
「ただ…何でしょう」
「彼以外の人間が出入りした様子が、防犯カメラに映っていない限り、…今の時点で十和田くんを容疑者から外すわけにはいかないでしょうね」
「……」
先生が口を閉ざし、足音だけが廊下に響く。
3人はそのまま待合室の前を通り過ぎ、夜間出入り口から出て行った。
充分な間を置いてから、わたしは立ち上がった。
「行きましょう。白井さん」
――今すぐ、本人から話を聞きたい。
ヒロシくんが容疑者…?
ありえない。
そんなこと、あるはずがない。
憤りと不安で息苦しささえ感じ、わたしは一度、深呼吸をした。
「祐希くんは、どうする?」
白井さんが冷静な声で聞く。
わたしは上着を脱いで、祐希の身体にかけた。
「ヒロシくんと少し話すだけだから、ここに寝かせておきます。病室は、303号室だって言ってました」
「303ね。…よし、行こう」
白井さんは先に立って歩き出した。
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