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「白井、あいつ、……本当にクズだな」
吐き捨てるように言って、拳を固める。
「萌、今の話、誰かに言った?」
「言うわけないじゃない。わたしだって白井さんのこと、信用してるわけじゃないもの」
更科くんはじっとわたしの目を見つめ、その言葉が嘘でないかどうか、注意深く見極めようとしていた。
その目が危険を孕んでいるように見え、わたしの手のひらに汗がにじんだ。
月子ちゃんを守るためなら、彼はきっと手段を選ばない。
彼の中にはそんな、深くて――間違った覚悟があるように見えた。
「更科くん」
わたしは、ゆっくりと言った。
「更科くんは、いったい何をしようとしてるの?」
「何、って?」
「――合いカギ」
わたしがボソッと言うと、更科くんが大きく目を見開いた。
「先生を恐喝したりして、……そこまでして手に入れたマスタキーのコピーを使って、学校で何をするつもりなの?」
「萌、なんでそんな事まで……」
「更科くんが月子ちゃんを守ろうとしてる気持ちは、見てれば分かる。
彼女をすごく大切に思ってることも。
でももし、彼女のために何か悪い事をしようとしてるなら、――お願いだから止めて。
悪い事をしたら、周りの人も、自分自身も傷つけることになるから」
「……」
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