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 お風呂から上がって自分の部屋に戻ると、すぐに後ろでドアがノックされた。 「はい」 「姉ちゃん?…ちょっといい?」 「いいよ」  ドアが開くと、難しい顔をして部屋に入って来た祐希がすたすたとベッドに進み、腰を下ろした。 「どうしたの?」 「なんか、怖くて。…あんな映像、見ちゃったからさ」 「……」  わたしも、フジコ先生の家で観たあの恐ろしいニュース映像が頭から離れなかった。  体育館の壁を舐める炎の勢いは、リサイクル小屋を焼いたボヤとは明らかにレベルが違っていた。 「…春山先生、大丈夫かな」  不安そうな顔で言う祐希に、わたしは思わず微笑んだ。 「心配なの?」 「うん…」 「大丈夫だよ、もう火は消えてるって言ってたし。 今後の対応について打ち合わせしたり、色々やることがあるから呼び出されただけだよ。火事を消しに行ったわけじゃないんだから」 「そっか…」 「そうだよ。先生は大丈夫」 「うん…」  祐希はやっと安心した表情を浮かべ、こちらを見上げた。 「姉ちゃん、やるじゃん」 「え?」 「春山先生、めちゃめちゃいい奴だったから」  言われて、思わず頬が緩む。 「でしょ。だから言ったじゃない」 「すげーカッコいいし、優しいし。けっこう気に入ったよ、俺」  多少上から目線なのは気になるけれど、――弟からの合格点に、わたしは何となく鼻が高かった。
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