1200人が本棚に入れています
本棚に追加
お風呂から上がって自分の部屋に戻ると、すぐに後ろでドアがノックされた。
「はい」
「姉ちゃん?…ちょっといい?」
「いいよ」
ドアが開くと、難しい顔をして部屋に入って来た祐希がすたすたとベッドに進み、腰を下ろした。
「どうしたの?」
「なんか、怖くて。…あんな映像、見ちゃったからさ」
「……」
わたしも、フジコ先生の家で観たあの恐ろしいニュース映像が頭から離れなかった。
体育館の壁を舐める炎の勢いは、リサイクル小屋を焼いたボヤとは明らかにレベルが違っていた。
「…春山先生、大丈夫かな」
不安そうな顔で言う祐希に、わたしは思わず微笑んだ。
「心配なの?」
「うん…」
「大丈夫だよ、もう火は消えてるって言ってたし。
今後の対応について打ち合わせしたり、色々やることがあるから呼び出されただけだよ。火事を消しに行ったわけじゃないんだから」
「そっか…」
「そうだよ。先生は大丈夫」
「うん…」
祐希はやっと安心した表情を浮かべ、こちらを見上げた。
「姉ちゃん、やるじゃん」
「え?」
「春山先生、めちゃめちゃいい奴だったから」
言われて、思わず頬が緩む。
「でしょ。だから言ったじゃない」
「すげーカッコいいし、優しいし。けっこう気に入ったよ、俺」
多少上から目線なのは気になるけれど、――弟からの合格点に、わたしは何となく鼻が高かった。
最初のコメントを投稿しよう!