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「あぶねーあぶねー」
突然背後で声がして、わたしは飛び上がった。
すぐ後ろの座席の陰から、白井さんがにょきっと顔を出している。
「春山先生、十和田くんの担任だもんね、そりゃあ顔出すよね。
とりあえず、ここで待っておくか。あの先生、おっかないんだもん。…萌ちゃんも、見つかるとまずいでしょ」
「もちろんですよ。白井さんと一緒のところを見られたら、大変なことになっちゃうんだから。…見つかっても、他人のふりしますからね」
「はいはい。…とりあえず、休憩でもしようよ。コーヒー飲む?…あ、ミルクティだっけ」
「わたしは結構です」
「遠慮しなくていいよ」
「ほんとに結構です」
白井さんはフッと笑って、
「まあそんな思い詰めた顔しないで。力を抜く時は抜いておかないと、後が辛くなるよ」
そう言って、自販機の方に歩いて行った。
…呑気なんだから…。
ぷりぷりしながらふと見ると、祐希が待合室の椅子にもたれて眠りこけていた。
隣に腰掛け、ほっぺをつついたけれど、熟睡しているのか全く反応が無い。
壁の時計を見ると、すでに深夜1時を過ぎようとしている。
祐希にとっても、長い一日だったもんね…。
振り回しちゃって、ゴメン…。
あどけない寝顔に申し訳ないような気持ちになって、わたしは祐希の頭を撫でた。
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