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「中1男子は、さすがに重かったな。こんな大きいガキ、初めておんぶしたよ」
顔を上げると、湯気の立つ、カップに入ったミルクティが差し出された。
「こういうときは、暖かい飲み物、飲んだほうがいいよ。…もう買っちゃったし」
「……」
わたしは仕方なく、手を伸ばした。
「…いただきます…」
「どーぞ」
白井さんはにっこり笑うと、わたしと祐希が座る席のひとつ前の列に腰掛け、コーヒーを啜った。
大きな背中を見ながら、両手で暖かいカップを包み込む。
一口飲むと、甘いミルクティーがジンワリと、逆立った心を癒してくれるような気がした。
「十和田くん、具合はどうだって?」
顔だけこちらに向けて、白井さんが聞いた。
「火傷とか、怪我をしてるわけじゃないみたいです。
ただ、…頭を打ったらしくて。明日、念のため検査する事になってるらしいです」
「あ、そう。…じゃ、意識はあるんだね?」
「はい。本人が、頭を打ったって説明したらしいので」
「そ。…ま、たいしたことないなら、よかったんじゃない」
白井さんは、あまり感情のこもらない様子でそう言って、前を向いてしまった。
…よくわからない人…。
わたしは首を傾げた。
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