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優しいかと思えば、こうやって薄情な顔を見せる事もあって…。
春山先生とは別の意味で、読めない。
「萌ちゃんは…」
今度は前を向いたまま、白井さんが呟くように言った。
「俺みたいな人間、…軽蔑してるんだろうね」
「え…」
「いつまでも、死んだ妹の敵討ちにこだわるような奴をさ。ま、別にいいんだけどね」
白井さんは隣の座席にコーヒーを置くと、うーん、と伸びをした。
「巻き込んじゃって悪いなぁとは思うんだけどさ。なにせ、藁をも掴む思い、っていうの?
嫌われちゃって当然のことしてるのは分かってるけど…もうちょっとだけ、協力してよ。
軽蔑したまんまでも全然、いいからさ。仕事柄、そーゆーの慣れてるし」
「……」
わたしは、黙ってミルクティーを啜った。
白井さんの背中は、とても孤独で、寂しそうに見える。
車のなかで一人、校門を見張りながら妹さんのことを思い出す白井さんの姿を想像すると、なんだかとても切ない気持ちになった。
「…違いますよ」
わたしが言うと、白井さんは不思議そうな顔をこちらに向けた。
「わたし、白井さんを軽蔑なんかしてません。
ただ…春山先生に余計なことばっかり言うから、怒ってるだけ。
それと、あんまり無茶な行動するから、心配で見ていられないんです。
これ以上、ヒヤヒヤさせられたくない、っていうだけで、嫌いとか思ってないし、軽蔑もしてませんから」
白井さんはしばらくわたしの顔を見つめ、照れたように頭を掻いた。
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