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「萌ちゃん」
「はい」
「好きになっていい?」
「ダメ」
「…だよね」
わたしはミルクティーを飲み干すと、紙コップを捨てるため、立ち上がった。
その時、奥の廊下から複数の足音と共に話し声か近づいて来た。
「やばっ。…隠れて、萌ちゃんっ!」
白井さんの大きな身体が、椅子の列の間に潜り込む。
わたしは急いで祐希の身体を椅子に横たえた。
こうしておけば、前の列の背もたれに隠れ、通路からは見えないはずだ。
わたしも慌てて前列の椅子の陰に身を沈める。
「…では、明日、署の方に改めて伺いますので」
…春山先生の声だ。
「先生、…どう思われます」
誰と話しているのか確認したくて、わたしは椅子と椅子の隙間から、通路の方を覗いた。
春山先生と話しながら歩いて来るのは、スーツを着た二人の男性。
中年の小さなおじさんと、ひょろっと背の高い若い人の組み合わせだった。
…もしかしたら警察の人かもしれない。
二人の雰囲気から、そう思った。
「十和田は真面目な生徒です。嘘をついているとは思えません」
春山先生が、固い声で言った。
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