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「そして、仕上げの一つは、…唇」 「…くちびる…」 「そう。…近頃は、グロスを唇にべっとり塗って、ツヤツヤに見せて男を誘いましょう、みたいな風潮があるでしょう?」 「風潮、…っていうか…。…まあ、はい…」 「そこに、落とし穴が潜んでるのよ…やたらめったらグロスを塗りまくると、失敗するから、気をつけて」 「そうなんですか」 「そう。…まあ、合コンで、不特定多数の男子の視線を集めたいなら、これは有効よ。好きなだけ塗って、輝かせたらいいわ。 だけど、…特定の男子に唇を奪われたいなら、…NO口紅で行きなさい。」 「え。…NO…なんですか」 「NOくちべに」 「NO、口紅?」 「そうよ。…椎名さん、あなた、グロス食べたことある?」 「食べた…っていうか、…舐めちゃったりすることは…」 「美味しくないわね」 「美味しくは、無いですね…」 「しかも、着け心地はどう?べたべたして気持ち悪いでしょう?」 「そうですね。わたしもそれが嫌で、滅多に付けないんですけど」 「でしょう?…ましてや男なんて、普段、塗り慣れていないあんなべたべたしたものが自分の唇にまとわりついたら、不快に感じると思わない?」 「…確かに…。そうかもしれないです」
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