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さあさ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。
ここに佇むは世にも奇妙奇天烈摩訶不思議、きっと誰もが見たことのない可笑しな可笑しな馬鹿者共だ。火を吹き姿を消し、腸ブチまけ首切り落とし、ぐるりと回ったお目々で睨まれた日にゃトラウマ一つ増えること請け合いだ。
――何? そんな奴ら、どこにも居ないじゃないかって?
おやおやお客さん、これは可笑しなことを仰られる。こいつらに負けず劣らず可笑しなことを宣わられる。
よぉ――く見てみなさい。そう、そこだ。私の傍……、ああ違うよ違う、そちらじゃない、こちらだ――ああ、もう、だから違うと言っているだろうに。そんなところ見たって、鼠一匹隠れてやしないよ。
何だって? やっぱりどこにも居やしないじゃないかって?
全くもう、そりゃお客さんの目が節穴だからだろうさ。ほうら、お客さん以外の人たちは皆、それはもう目を丸くしてこちらを見ているだろう? これでもお客さん、あんたは信じないと言うのかい。
信じるも何も、だから見当たらないって?
ふうむ、困ったねぇ……。それはそれは、困ったことだねぇ。これじゃあ私の舞台を開けないじゃあないか。見えないってなら、始めたって仕方がないさね。一体どうしてくれようか。見せるのは簡単だが、見えなきゃ意味がないよねぇ。
どういう意味だって? なあに、難しく考えることはない、そのままの意味だよ。私からお客さんに見せてあげるのは造作もないことだが、お客さんが自分で見付けないと面白くないってだけの話さ。私のこれも商売でね、家には妻とまだ幼い娘が……出来る予定だ から、そこそこに繁盛しておかないといけないのだよ。とはいっても、もうお金は貰っているから盛り上がりなんて気にする必要はないのかもしれないけれどねぇ。得るものは得たわけだ、ここいらでトンズラ扱いても私に障りはない。
でもね、そうは問屋が卸さない。こんなに沢山のお客さんを迎え入れているんだ、わっと盛り上げて楽しませて差し上げないと、私の気が苛まれてしまうのさ。まあ結局、だから私に障りはあるのかもしれないね。全く損な性分だよ。
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