さようなら、さやか

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「ここ、禁煙だよ、それにたばこは20…」 とさやかに指摘され、舞子は、残念そうに、たばこをしまった。 「やっと、あたらしい継続的な仕事が決まったんだ」 という舞子だったが、あまり嬉しそうではなかった。 さやかが、何もいえず、自分のコーヒーの水面を見つめていると、 「さやかも、手遅れにならないうちに、将来のこと、かんがえなよ」 舞子は、立ち上がり、お盆を片付けて、食堂を出て行った。  舞子がいなくなったあと、さやかは、ふと将来について、思いをめぐらせた。  そういえば、この施設には20歳以上の派遣される職員は見たことがない。20歳になると、施設を出て、自立するのだろうか。それとも、美羽は30歳と聞いているから、今度は、管理する側の職員として、雇われるのだろうか。  あるいは、本当の家族の下へ返還されるのか。  美羽に聞いても、きっとはぐらかされるだけで、話してはくれないだろう。美羽のやさしさは、いつもその場しのぎなのが、さやかにはよくわかっていたからだ。 「もうしめますよー」 調理場から、食堂のおばさんの声が聞こえてきた。
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