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「待ちなさい……」 玄関でお父さんに捕まった 「何?」 ……と、目も合わせずパンプスに足を入れると、黙ってハンカチを渡された 「……………。」 ズズズ……黙って見上げると、お父さんが怖い顔をしていた ………私のこと怒ってる 「マリカ? こっちだって、エリカの話に多少の疑問はあったよ? 純平くんから聞いた話と違うところも多いし…… ただね? 経営が行き詰まってるのか? ……とは、こっちだって聞けないことだよ このままマリカが苦労をするのかと思うと心配だったし いつもは二人で来るのに、今日はひとりで来たりするから…… もしかして本当なのかと誤解したのは確かだよ…… それは謝るよ……ゴメン…… そらなら、ちゃんと話を聞かせてくれないか? 誤解を解いてから帰ったっていいんじゃないか?」 落ち着いた話し方 いつものお父さん 私の話を最後まで聞いてくれる人 なんで、急に頭に血が上っちゃったんだろう? お姉ちゃんが私のストレス…… そのストレスで頭が混乱していたのかも 冷静に話せば済むことなのに…… 「………ごめんなさい」 「ちょっと待ってて?」 スタスタ……とスリッパの音を立てて キッチンへ行って、何やらゴニョゴニョと話している声…… 「上がりなさい……せっかく来たんだから お腹も空いてるだろ?」 「でも……お母さんが……」 「お母さんには、口出ししないように言ってきたから……」 ………できないと思うよ? けど…… お父さんが言う通り、誤解を解かないと……
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