第2話 帆香と二人っきり!大丈夫私殺されない?

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 瑞希(リリア)は帆香に手を掴まれ、半ば強引に屋上へと連れて行かれた。  屋上はベンチや苗木、花壇などが備え付けられている。きっと毎日仕事に追われるビジネスマン達の憩いの場としての役割を果たしているのだろう。現在はまだお昼前なので屋上には帆香、瑞稀以外、人の姿は全くなかった。そして、それを取り囲むように瑞稀の身長の二倍以上もある高さの金網のフェンスに囲まれている。フェンスは飛び降り自殺防止目的のために設置されているものだ。  フェンスの向こう側には東京の町並みが見える。とは言っても今いるビルはそれほど高いビルというわけでは無い。視界には今いる位置よりも高い高層ビル群が建ち並んでいる。  まだ春先であるため、風は少々強いが非常に涼しい。さっきまでかいていた冷や汗も、その風によってクールダウンしていく。  しかし、瑞稀の緊張は解かれたわけでは無い。目の前には天敵である天使の帆香がいる。  帆香は屋上に到着すると、瑞希の手を離し、屋上の一番端、フェンスの側まで歩き、瑞希の方へ振り向く。瑞希は使い魔のミュウと共に屋上の入り口に立ったままだ。  「もう、いつまでそんなに警戒しているの?私はあなたを殺す意志なんか無いって。」  「あんた、そう言って油断させようとしているんでしょ。私は騙されないわよ。」  帆香は再びフェンスの外側を振り向き話し始める。  「あなた、今私のことを天使って言っていたけど、正確には今は天使じゃ無いんだ。」  「えっ?どういうこと?」  「私・・・『堕とされ』ちゃった。」  『堕とされた』その言葉は、帆香は堕天使だと言うことを意味する。  「私ね、ずっと前からお父様に「人間界に行きたい~!」って言っていたの。だって、人間界ってなんかすごく楽しそうじゃない?少なくとも天界から見た限りでは、天界よりも楽しそうに見えたわ。だからずっとそこのことでだだをこねていたの。そうしたら昨日、お父様にそんなに行きたいんなら勝手にしなさい!もう二度と天界に戻ってくるな!って言われて。それで私気がついたら私、渋谷の街にいたの。」  帆香は再び瑞稀の方を振り向く。満面の笑顔を浮かべて。  「初めての人間界。もう刺激的だったわ!見る物全てが!やっぱり私の思っていたことは間違いじゃ無かった、とっても楽しい世界だって!」
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