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「いっだあぁぁあぁいっ!」
その叫びと共に、僕の顔の筋肉が引き攣り凄まじく不機嫌な表情を作り出したのを感じた。
原因は明らか、一目瞭然だ。目の前のゴスロリチックなドレスを着た、自称魔法少女が手にしていた魔導書を見つつ詠唱しながら階段を登っていたら、物の見事にこけたからだ。
躓き、無様に地面に突っ伏すまでの一瞬の間に、僕は見てしまった。ひらひらと舞うスカートの間から覗く、蝶の刺繍が入った黒レースがふんだんに使われた黒のパンツを。
「くっ……!!見たな!ボクのパンツ!」
涙目で僕を見てくる。お前が泣くなよ。泣きたいのは僕だ。嘘だけど。
「睨むなよ。見たくて見たんじゃない。誰がお前のパンツなんか見るか。好き好んで女装好きの男のパンツなんか見るか。こけたお前が悪い。見られたくないなら階段で詠唱なんかするな」
「うっ……くっ…うぅ~…」
反撃される前にまくし立てたら泣かれた。
「なんだよ!そこまで言わなくてもいいじゃんか!ばーかばーか!」
馬鹿はどっちだ。
【ねぇねぇ、死ぃちゃん。そんなにスミノフ嫌いなの?】
僕が右手に持っている機関銃から、可愛らしい男の子の声が上がる。機関銃に宿る自我、きかん坊だ。ネーミングセンスゼロすぎて可哀想だ、本当に。
まぁ日本で言う付喪神のようなものだ。
ちなみにスミノフは自称魔法少女のことで、死ぃちゃんとはこの僕だ。
名前を思い出せないから死体の死ぃちゃんと、きかん坊に名づけられた。
まぁ、名前を思い出せないのは嘘だったりするけど。
スミノフが僕を蘇らせたのは、新鮮な死体にきかん坊を定着させようとしたからみたいだ。スミノフは機関銃の扱いが下手な割に機関銃が好きで、なら機関銃の扱いに慣れている本人に扱ってもらおうという発想の元、きかん坊の身体に僕が標的となった訳だ。
失敗が重なってきかん坊は定着せず、死体の主であった僕の精神までもが目覚めて。
きかん坊を定着させようとした後遺症か、銃の腕がスナイパー並になったけど。
機関銃がやはり好きなスミノフは、きかん坊と同じタイプの機関銃を調達したけど、悲しきかな腕は上がってない。
「……うん、嫌いだな。確かにショタと男の娘は好きだけど、お前は嫌いだ」
「な、なんでだよ!ボク可愛いじゃんか!」
ぷんっと頬を膨らませて腰に両手を宛てる。何が可愛いんだ。死ねばいいのに。
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