17人が本棚に入れています
本棚に追加
本当に学芸会レベルの仮装だ。魔法使いやら吸血鬼やら人狼やら。その中でも狐の面を被った奴が一番、異彩を放っている。
あいつが数子……か?
「んふふ、どう?今日ハロウィンじゃない?だから皆に仮装させてみたの。ところで、銃の腕前は上がったのかしら?誰でも得手不得手はありますの、ってね」
「黙れやこのクソビッチ女狐がぁ!」
スミノフのそんな大声初めて聴いたな。あの狐面の女と何があったのか気になるところだ。
そんなことを考えてたら、数子が目の前にいた。嫌らしい手つきで肩を触ってくる。
「うふふ、味見させてね」
仮面を少しずらして、がっぷりと思いっきり噛まれたのを感じた。なるほど、吸血鬼なのか。
「まっずうぅぅ!何これまっずい!何よあんた、死体なの!?うげえぇぇ!好みだったのに!」
僕としては、好みで奴隷にされるとか迷惑すぎるけど。まぁある意味、死んでて助かった。
「な、な……!ボクの死ぃちゃんに汚い牙で傷をつけやがってえぇぇぇ!死ねえぇぇぇぇぇぇ!」
銃口に魔法陣が展開し、炎を纏った弾丸が発射される。
追いかけ回しながら炎を発射していくけど、数子は難なくひらりひらりと躱していく。可哀想な奴隷達は悲鳴を上げながら逃げ惑ってるけど。
「あっ」
盛大に炎をぶちまけようとして、何もないのに躓いてこけた。魔法陣の展開は止まらずに、炎が発射される。
僕に向かって。
「何すんじゃあぁぁっ!」
咄嗟に跳んで、天井に張りつく。
【スミノフって強いのか弱いのか分からないよね。銃の扱い下手だし、運動神経悪いし、その上扱いが雑だし。だから悪戯したくなるんだよね~】
きかん坊がぼそっと呟く。確かに強いのか弱いのか分からない。分かるのは馬鹿ってことだな。
「あらあら、相変わらず単純ね。そんなんじゃ私を殺せないわよ?」
数子がスミノフを馬鹿にしてる間に天井から降り、空中から銃を発砲する。殺すための弾丸を。
弾丸は的確に心臓と脳を撃ち抜いたのにも関わらず、数子は僕とスミノフを見て、けたたましい笑い声を上げる。
狐の仮面に罅が入り、びしっと音を立てて割れる。
「……え?」
「…………」
仮面の下に隠されていたものは。
最初のコメントを投稿しよう!