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 足音を潜めながら、薄暗い廊下を進んでいく。  301…302…303。 「ここだ」  見ると、病室にはヒロシくんの名前だけが入っていた。  白井さんと顔を見合わせ、引き戸をゆっくりと開ける。  中を覗くと、そこは四床のベッドが並ぶ、比較的小さな病室だった。  薄暗がりに目を凝らすと、右の手前のベッドが盛り上がっている。 「…ヒロシくん…?」  小声で呼び掛けると、ガバッと布団が持ち上がった。  ヒャッと声を上げ、白井さんの背中に隠れる。  恐々顔を出すと…。 「おっ。椎名。…びっくりしたなぁ。何してんの、こんなとこで」  ベッドに身体を起こし、ヒロシくんがポカン顔でこちらを見ていた。 「何してんの、って…。…もう!…心配したんだからね!」  わたしはベッドの脇に駆け寄り、ポカポカと肩を叩いた。 「どうせまた、忍び込んで七不思議の映像、撮ってたんでしょ!もう、どうしてそういう危ないことばっかりするのっ」 「いてっ。…いてーよ、椎名っ」  ヒロシくんが慌てて枕でガードする。  泣きそうになるのを堪えながら、身体に目を走らせたが、特に手当の跡は見られないようだった。
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