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放課後。
放送室に向かう途中、廊下の窓から焼跡の体育館が目に入った。
立ち止まって眺めると、右半分の壁がすっかり崩れ落ち、骨組みだけになっているのが分かる。
調べは終わっているのか、警察官の姿は見当たらない。
いつものバッハ頭の警備員さんが、ロープの前で見張りをしている以外、人影は無いようだった。
「萌先輩。…何してるんですか」
振り返ると、加賀月子がこちらに向かって歩いて来るところだった。
「火事現場の見学?…趣味悪いですね」
にっこり笑顔で言われ、わたしは慌てて窓際を離れた。
放送部室に向かって歩き出すと、とことこと足音がついて来る。
「今日の下校放送、萌先輩がブース内指導、してくれるんですよね?」
「あ、うん」
「サボってくれません?」
「え…」
驚いて振り返ると、月子ちゃんは笑顔で、
「萌先輩が来なければ、代わりに哲哉くんが指導してくれるでしょ」
「……」
わたしがゆっくりと足を止めると、月子ちゃんも続いて立ち止まった。
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