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「月子ちゃん…」
「はい」
「わたし、もう騙されたりしないから」
勇気を出して、真っ直ぐに月子ちゃんを見据える。
「何のことですか?」
余裕たっぷりの口調で言われると、さっきまでの確かな気持ちが揺らぎそうになる。
わたしは急いで気合いを入れ直した。
「月子ちゃんと春山先生は、そういう関係じゃないってこと」
「……」
「全部、聞いたから。…白井さんて人から」
白井さんの名前を出した途端、月子ちゃんの顔色が変わった。
「…どこまで聞いたんですか?」
「…過去の事件のこととか、…今、ケアワークの一環で春山先生のご実家に出入りしてること…」
「……」
月子ちゃんは、ふう、とため息をついてから、わたしを鋭い目で見据えた。
「…だったら、何?…私の方が哲哉くんの傍に居るってことに変わりはないでしょ」
「……」
「…なに?その顔。…私のこと、可哀相だとか思ってるの?」
わたしは慌てて首を振った。
「そういうわけじゃ…」
月子ちゃんは、憎しみのこもった目でわたしを見つめていた。
その迫力に、思わず身を竦ませる。
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