-2-

2/8
前へ
/36ページ
次へ
 ちら、と運転席を見ると、春山先生は黙って前を見つめていた。  …どうしたんだろう、急に…。  単純に嬉しくて、今にもはしゃぎ出しそうなわたしを、冷静なわたしが必死で制御しようとしている。  先生がわたしを、こんな遅い時間に呼び出すなんて、初めてだもの。  きっと、何かある。  それがいいことなのか、悪いことなのか、…見極めてからじゃなきゃ、喜べない。    春山先生からの突然の電話で、わたしは目の前に停車したバスを見送った。 『今、どこ?』 「え。…えっと、…バス停ですけど…」 『どこの?』 「…区役所前の信号のところの…。塾の、すぐ側の…。」 『ああ、分かった。…ちょっとそこで待ってて』 「…え?」 『迎えに行くから』 「……」  えっ。  …という、とてもシンプルな約束を交わしたのち、今、この状態になっているわけなんだけど…。  どうしてだろう…。  先生がわたしを呼び出す理由って、…何がある…?
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1118人が本棚に入れています
本棚に追加