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 …あ…。  …わたしの、一番好きな、表情…。  頬に触れる指先の感触と、先生の艶やかな視線に、胸がトクンと震えた。  …そんな目で、見られたら…。  ドキドキが次第に大きくなり、耳たぶが熱くなるのが分かる。  …今、おねだりしたら、…キスしてくれるかな…。   『このままだと、ほんとにまずいよ。先輩も、やり方を変えなきゃ。もうちょっとうまく動かないとさ』  更科くんの言ってた、うまく、動くって…。  もっと、攻めたほうがいいってことなのかな…。  ってことは、…こういう時に、果敢に…っ。  わたしが気合を入れ、ゆっくりと運転席に身を乗り出そうとすると、…その前のめりな行動は、ガチッ、とシートベルトに阻まれた。  …あれっ。  目の前の信号が誇らしげに青に変わり、先生の手がすっと引っ込んだ。  車が静かに動き出す。  くくく、という笑い声に顔を向けると、先生が口元にこぶしを当てて笑いを堪えていた。  …ううう。  …笑われた…。  あまりの恥ずかしさに、わたしは顔を上げることが出来なかった。
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