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「…何時に帰ればいいの?」 「……」  先生の一言で、わたしはムクムクっと立ち直った。  目をキラキラさせながら先生の横顔を見つめる。  …これから、どこに連れて行ってくれるんだろう…。 「塾の帰りはいつも何時くらいなの」 「はいっ、…9時半から10時の間くらいですけど、…でも、メールすれば10時半くらいまでは…」  先生は時計を見て、 「いや、いいよ。間に合うから」 「……」  え? 「9時半ちょい過ぎには着くよ」 「……」  わたしは目をぱちくりした。 「…先生…」 「なに」 「もしかして。本当に、送ってくれるだけ、ですか…?」 「そうだよ」 「……」  ――そして――。  10分後、わたしは鞄を抱え、家の前に立っていた。  窓を開け、先生は一言、 「また明日」  とだけ言って車を発進させた。  先生の車を見送りながら、わたしはその場にぽつんと立ちつくしていた。  …な。…ななな何だったの…?  家の門から30メートルほど離れたところに立つバス停に目をやる。  バス停から、バス停まで、送り届けるって…。  それって……。  バス、じゃん。  
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