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「ねえ、田辺くん」
「ん?」
「…わたしと月子ちゃんて、顔、似てるかな」
「…なんで」
「更科くんが今、『顔が似てる』とか言ってたから…」
「ああ…」
田辺くんはわたしの顔を眺め、
「まあ…。正直、加賀のこと見た時は、ちょっとびっくりしたよ。奈良崎も、俺とおんなじこと言ってたし」
「え…?」
「加賀が、やけに椎名に似てるからさ。
しかも、春山先生の勧めで放送部に入って来ただろ?
ちょっと、あれ?みたいな感じ、あったんだよね。絶対嫌がると思ったから、言わなかったけど」
「……」
「しかも加賀、最近、黒髪にしただろ。
ますますお前に似て来たって、うちのクラスの奴も言ってたよ。…俺は、そこまで似てるとは思わないけどな」
わたしが固まっていると、田辺くんは笑って、
「大丈夫だよ。顔が似てようが何だろうが、絶対、椎名の圧勝。俺が保証する」
そう言って田辺くんは、再び目を落とした。
プリントの一点に目を留め、ん?という顔をして、ペンケースを取り出す。
「俺、この時間、来れないな。…替えてもらわないと…」
何かを書き込んでいる田辺くんの横顔を眺めながら、わたしは月子ちゃんの顔を思い浮かべていた。
確かに彼女は、…綺麗に染まっていた栗色の長い髪を、最近、黒く染め戻していた。
…月子ちゃんとわたしが、似てる…?
考えたこともなかった。
初めて言われたその言葉に、なぜか再びざわざわと、胸が騒ぐのを感じた。
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