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階段をトトト、と降りて行く途中で、左手の保健室の方から、引き戸の開く音が聞こえて来た。
階段を降り切って左に折れたところで、わたしは凍りついた。
「お。椎名」
保健室から出て来たのは、…小林先生だった。
「あ、…こんにちは」
「…こんにちはって、何だよ。…ヘンなやつだな。保健室に用事か?具合でも悪いのか?」
「いえ、あの…。ちょっと…」
自分でも、顔が引きつっているのが分かった。
小林先生は怪訝な顔で、わたしの横を通り過ぎようとする。
「あの、…さよなら」
「おお。さよなら」
そっと振り返り、後姿を見送る。
…未だに、信じられない。
小林先生が、ゆかり先生と…。
二人が抱き合う画が浮かびそうになり、わたしは慌ててそれを振り払った。
絶対、想像したくない…。
わたしはやっとの思いで裸の小林先生を頭から追い出すと、保健室に向かって歩き出した。
カラカラ…。と引き戸を開けると、デスクの前に立つゆかり先生の背中が見えた。
「あの…」
呼び掛けると、先生はなぜか慌てたように振り向いた。
「あら。椎名さん。…どうしたの?」
先生の動揺した様子に、わたしは戸惑った。
…今、何か…背中の後ろに黒いものを隠したような…。
ゆかり先生は少し不自然に微笑みながらこちらを見返している。
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