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「あ、…えっと…加賀月子さんは…」
「ああ、加賀さんなら、今、寝てるわよ」
先生が示すほうに目をやると、確かにベッドが盛り上がっていた。
わたしは引き戸を閉めると、とことこ、とベッドに歩み寄り、顔を覗き込んだ。
…ほんとに寝てる…。
彼女は微かに寝息を立てながら、ぐっすりと眠り込んでいるようだった。
「大丈夫だったんでしょうか。…頭、打ったって…」
「うん、大丈夫みたい。特に強くぶつけたわけじゃないようだし。『わたし受け身がうまいんです』なんて笑ってたわよ」
わたしはほっと胸をなでおろした。
大きなけがをさせてしまう事を考えたら、狂言であってくれたほうがよっぽどいい。
「春山先生がもう少ししたら迎えに来て、送って行くそうよ。それまで、ここで寝かせておいてほしいって」
「そう、ですか…」
…また、春山先生の実家に行くのかな…。
月子ちゃんに言われた言葉がちらつき、落ち着かない気分になる。
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