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「また寝ちゃったね」
バックミラーを見ながら、白井さんが愉快そうに言う。
わたしは後ろを振り返って、祐希の寝顔を覗いた。
「お腹がいっぱいになると、どこででも寝ちゃうんです。…口あけて、幸せそう…」
「そりゃ、あれだけ食えば、幸せにもなるよ」
「…そうですね」
祐希はグラタンと大きなハンバーグをぺろりと平らげ、さらにライスまでお代わりしていた。
最後にデザートのアイスを食べ終わったときには、さすがに苦しがって、口もきけない様子だった。
「あんなに美味しそうに食べてくれると、連れて行った甲斐があるなあ。シェフも大喜びしてたし」
白井さんも、とても嬉しそうな顔をしている。
その顔を見たら、…はじめは突然の誘いに驚いたけれど、…結果的には来てよかったかな、と思った。
「…でも、…ホントに萌ちゃんは強情だなあ。奢らせてくれてもいいのに」
「ダメですよ。知らない人からご飯を奢って貰うわけにはいきませんから」
「あっ、ひでっ。…知らない人、はないんじゃない?」
「だって白井さん、嘘ばっかりつくんだもの。名前だって、本当かどうか、わかんない」
「ありゃあ。…すっかり信用失くしちゃったなぁ」
「自分が悪いんでしょ」
「…ま、確かにね」
白井さんは困ったように肩をすくめた。
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