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白井さんから目を逸らすことが出来ないまま、言葉を選んでいると、大きな手のひらが伸びて来て、わたしの頭を引き寄せた。
壊れ物を扱うように、白井さんはふんわりと、私の頭を自分の胸元に抱いた。
押し戻して逃れようとすれば、簡単に振り払えるような頼りない力だったけれど、私がそうしなかったのは、…彼の手が、微かに震えていたからだった。
「…白井さん、…ダメ…」
「…わかってる…」
太い指が、私の髪をくしゅ、と握った。
「…なにも、しないよ…」
次第に、…白井さんの心の痛みが、その胸を通して、わたしの心に伝わり始める。
まるで、…妹さんの面影を、わたしの中に手探りで求めているようで。とても苦しくなった。
白井さんが欲しがっている言葉を、必死で探す。
少しでも気持ちを楽にして、助けてあげたい。…わたしの中に、そんな気持ちが湧き上がっていた。
「…わたしには、…妹さんの気持ちは、わからない。でも…」
何も知らないわたしが、余計な事を言ってはいけない。
もし、…間違えて傷口を広げてしまっても、責任を取ることなんてできないんだから。
そう思いながら、…わたしは言わずにいられなかった。
「わたしは、…もしかしたら妹さんは、…白井さんには何も望んでないんじゃないかって、思う。
自分の事で、…大好きなお兄ちゃんを苦しめ続けるのは、…きっと、辛いよ。
…白井さんのことを未だに責めているのは、…妹さんじゃなくて、…白井さん自身なんじゃないかな…」
ぴく、と指先が動いて、…白井さんの動揺を知らせる。
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