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その時、部室のドアが開いて、春山先生が入って来るのが見えた。
みんなのあいさつに、手を上げて応えている。
そして、こちらに目を向けながら、壁に寄り掛かり、腕を組んだ。
――先生……わたしの放送がめちゃくちゃだったから、様子を見に来たんだ……。
「具合でも悪いんですか?」
顔を向けると、月子ちゃんのにっこり笑顔。
「え、…どうして?」
「なんか、顔、こわばってて、ヘンですよ」
「……」
なんか、…いつにも増して、攻撃的なんですけど…。
「月子ちゃん…」
「はい?」
「なにか、嫌なことでもあった?」
「…どうしてですか?」
「…何となく…」
「嫌なことなんて、ないですよ。…逆に…。いいことなら、あったかな」
何かを含んだような口調に、わたしは例によって、たやすく落ち着かない気持ちにさせられてしまう。
「…いいこと、って…」
「聞きたいですか?」
「……」
わたしは首を横に振った。
「…いい。…聞きたくない…」
月子ちゃんはフ、と笑って、
「弱虫」
と呟き、原稿に目を戻した。
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