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目の端に動くものを見つけ、ブースの外に目を向けると、更科くんのカンペに、
『萌、可愛い下唇が、出っぱってるよ』
わたしは素早く下唇を引っ込めた。
どうやら、地味に凹むと、わたしの下唇は外側に出て行く傾向にあるらしい。
わたしは春山先生の方を見た。
さっきと同じ姿勢で、こちらをじっと見ている。
お互いの声は、防音で聞こえていないけれど、…先生はきっと、わたしの『こわばったヘンな顔』には気付いていて、…ちゃんと放送できるか心配しているはずだ。
…しっかりしなくちゃ。
恋パラの放送も、今日が終わったらあと1度きりなんだから、…後悔のないように、ちゃんと務めたい。
『音楽終わりまで30秒でーす』
更科くんのカンペに頷き、わたしは原稿を手に取った。
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