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「…ズルイ」
「…何が」
「だって、…先生はわたしの高校時代の顔、知ってるのに」
「…お前…。それはしょうがないだろ」
わたしは膨れながら、カレーを口に運んだ。
先生のけち…。アルバムくらい、見せてくれてもいいのに。
心の中でぶつぶつ言いながら、カレーを3分の2ほど食べ進めたところで、
不意に、うーん、という大きな呻き声が聞こえた。
驚いてリビングの方を見ると、…春山先生のお兄さんが頭を起こし、大きく伸びをしている背中が目に入る。
「とーちゃん、よだれ」
「お、…サンキュ」
翔平くんがせっせとティッシュで口元を拭いてあげている。
わたしはワクワクしながら、その後姿を見つめていた。
…いよいよ、ご対面…。先生と、似てるのかな…。
くるり、と振り向いた顔を見て、わたしはスプーンを落としそうになった。
…えっ。…えーーーっ。
…めちゃめちゃ、…カッコイイ…。
ていうか。…ここまで似てるなんて…。
春山先生のお兄さんは、春山先生にそっくりだった。
先生の顔に、ちょっぴり甘さを加え、髪を茶色くして長めにした感じ…。
つまり、…ちょっとチャラい春山先生、そのもの。
先生が、向かいの席で長いため息をついた。
「…起きた。…椎名、気をつけろよ」
「え…」
「…おっ。…女子高生、発見!!」
…はい?
春山先生のお兄さんはガバッと立ち上がり、こちらにすたすたと歩いて来た。
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