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「なんか、カレーの匂いに混じって、女の子のいい匂いがするなあと思ってたんだよ、夢の中で」
ニコニコしながら、ダイニングテーブルに手をつく。
近くで見ると、コハク色の瞳まで、先生と全く同じ。
ぽかんと見上げていると、その美しい瞳がぐっと近づき、わたしの顔を覗き込んで来た。
「はじめまして、春山センセの兄の、和真です。よろしく」
「…よ、…よろしくおねがいします…」
右手を差し出され、慌ててスプーンを置き、その手を握る。
ぶんぶん、と大きく振られるまま、握手をして…。
「…あの…」
「なあに?」
「……」
わたしは、一向に自由にならない右手をまじまじと見つめた。
引こうとしても、がっしりと握られ、解けない。
わたしは思い当たった。
もしかして、…いや、間違いなく…。
これが先生の言う、――放し飼いの動物のオス。
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