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「…女子高生さん、お名前は?」
「え…。あ…。椎名、も」
「椎名」
春山先生の声が遮る。
「その人には下の名前、教えちゃダメ」
「…え」
わたしは戸惑って、和真さんと先生の顔を交互に見た。
和真さんがじろっと先生の方に視線を送る。
「…なになに、…お二人は、どういう関係なわけ?」
「うちのクラスの生徒。放送部の子だよ」
「へえーー」
お兄さんは、先生に向けていた冷やかすような目つきを、わたしの方に移した。
「椎名さんは、カレシ、いるの?」
「……聞いてどうすんの、和真」
「彼氏いる子だったら口説いちゃまずいかなって」
「息子の目の前で女子高生口説くなよ。ていうか早く手、離して」
「椎名さんが下の名前、教えてくれたらね」
和真さんは、艶っぽい笑顔をわたしにずいっと近付けた。
吸い込まれそうな瞳に魅入られ、わたしは身体を引くことさえ出来なかった。
「……可愛いね。人形みたい」
「……」
…先生にそっくりな顔で、そんな、甘いセリフ、言われちゃったら……。
顔が瞬時に、かああっと熱くなって、わたしは俯いた。
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