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「あ、赤くなってる。めちゃめちゃ可愛いんだけど。お、すげー、耳まで」
和真さんの指が、熱を帯びた耳をスススっとなぞり、わたしは思わず、ひゃっと声を上げ、ピョコ、と飛び上がった。
…先生、助けて…っ。
わたしが視線を送り、救いを求めると、…先生がボソッと呟いた。
「…マミさんに言うよ」
…ぴた、と和真さんの手が止まり、するする、と右手が解かれる。
「……」
一瞬、笑顔を恐怖にひきつらせてから、和真さんはくるりと背を向け、すぐ側に立っていた翔平くんの身体を抱き上げた。
「さーて、じゃ、そろそろ、とーちゃんと一緒に寝よっか、翔平」
翔平くんは足をじたばたさせて、
「えーー、やだあ。哲にぃと寝たい」
「…そーゆーこと言うなよぉ。…とーちゃん、本気で傷つくよぉ」
和真さんは切なそうに言いながら、翔平くんに頬ずりしている。
春山先生がくすっと笑って、
「翔平、ごめん。とーちゃん起きたから、宿題も見てもらって」
「ええー。哲にぃがいいよぉ」
不満そうな翔平くんを抱え、和真さんは、だからそーゆーこと言うなって、などと文句を言いながら廊下の向こうに消えて行った。
「……」
呆気に取られて口を開けたまま、わたしは廊下の方に視線を向け、固まっていた。
――劇的チャラさだった――。
先生とおんなじあの顔で、チャラい言動をされることは、…わたしにとって、かなり衝撃的…。
そして、…ちょっぴり新鮮だったり…。
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