-5-

6/9
前へ
/38ページ
次へ
「…あの子はね」  やがて先生は、ゆっくりと話し始めた。 「俺と、…今日子先生の、共通の知人から、…見てあげるように頼まれて、預かっている子なんだ」  …共通の知人…。  わたしの頭に、すぐに、一人の人物の顔が浮かんできた。 「椎名も会ったことがあるだろ。…あの、…怖い顔の、刑事さん」 「…はい。…ササモリさん、ですよね」  先生は、小さく、うん、と言った。 「月子ちゃんは笹森さんの、親戚か何かなんですか」 「…いや…。違う」  先生は、首を横に振った。 「笹森さんが担当したんだよ。月ちゃんのお父さんが亡くなった、あの放火事件をね」  先生が淡々と話してくれた事件の内容は、…あの日、ファミレスで白井さんに見せられた記事の内容と、ほとんど同じだった。  ただ、先生の言葉の端々に、月子ちゃんを思いやる気持ちが見え隠れして、浮かんでくる彼女の印象は、白井さんから説明を受けた時のものとは、明らかに違っていた。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1141人が本棚に入れています
本棚に追加