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「加賀は……どうしても、当時いた施設になじむことが出来なかったらしくてね。
同部屋の子を閉め出して部屋に閉じこもったり、同じ施設の仲間と取っ組み合いのけんかをしたり、精神的な不安定さから、問題行動が続いていたみたいなんだ。
通っていた学校にも事件のことは当然広まっていて、とても楽しく過ごせるような状況ではなかったし…。相当、辛い思いをしたと思うよ」
わたしは、放送部室で突き飛ばされた時のことを思い出した。
先生の話を聞いてから考えてみると、…あの時の激しさの裏側に、彼女の脆さが透けて見えるような気がしてくる。
「笹森さんは、取り調べを担当していた彼女の母親から頼まれて加賀の様子を気にかけていたんだけど……。
あまりに極端な行動をする彼女を心配して、以前から知っていた今日子先生のところに、相談に来たんだ」
先生はそこで言葉を切って、ミラーを確認しながら車線を右側に変更した。
左端停められた路上駐車中の車を避け、再び左の車線に戻る。
「笹森さんと今日子先生から、俺も色々と相談を受けて、親戚の加賀さんや加賀のお母さんとも話し合って、――その結果彼女は、当時マミさんが勤務していた今の施設に移ることになったんだよ。
学校も、今日子先生が紹介状を書いて、うちへの編入が決まったんだ」
…そうだったんだ…。
月子ちゃんが編入してきたのは、今年の4月ごろ。
その時期にそんな事があったなんて、わたしは全然知らなかった。
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