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HARUYAMA、とローマ字で綴られた大きな表札は、どういう仕組みなのか分からないけれど、内側から当てられた光がぼんやりと文字を浮かび上がらせる、モダンなデザインだった。
見上げると、数段の階段を上がったところに建つのは、白い壁の、大きな家。
そしてその大きな窓からは、暖かそうな暖色系の灯りが洩れている。
門の内側に手を伸ばし、カンヌキを外すと、先生は門扉を開けてわたしを促した。
「どうぞ」
「…はいっ…」
わたしは緊張で強張る身体を、ぎこちなく門の中に進めた。
玄関前に立ち、インターホンを鳴らしてから、先生がわたしを見下ろした。
「そうだ椎名」
「…はい」
「うち、動物のオスがいるから」
「…え?」
「放し飼いしてるから、触られたりしたら言って。すぐに隔離するから」
「…?…はい…」
ドタドタ、という足音が聞こえ、続いてカチリ、と鍵を外す音。
ガチャ、とドアが開いて顔を出したのは、
「おかえり、哲にぃ」
小学生くらいの男の子が、ぴょんと春山先生に飛び付いた。
満面の笑みを浮かべ、先生の身体にぎゅっとしがみつく。
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