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「ただいま。…もう、風呂入ったの?」
「うん、哲にぃと入ろうと思ったんだけど、お客さん連れて来るって言うから。しょうがないからとーちゃんと入っちゃった」
「…そっか。…どうぞ、椎名」
「はい…」
春山先生は男の子を抱っこしたまま、玄関の中に入って行く。
家の中には、うちのカレーとは違う、もっとスパイスの効いた香りが漂っていた。
「宿題、やったの」
「…まだ。…分かんないとこあるから。とーちゃん、こたつで寝ちゃってるし」
「んじゃ、あとで見てやる。…何?算数?」
ふと見ると、…先生に抱きついて、肩の向こう側から、じっとこちらを見つめる、コハク色の瞳。
ドキッとするほど、先生に似ている。
先生は上がり框に男の子の身体を下ろすと、わたしの方を見て、
「…甥っ子の、翔平。写メ、見せただろ」
「あ、…はい…」
先生は翔平くんの頭を撫で、
「ほら、ごあいさつ」
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