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「ただいまマミさん。連れて来たよ。放送部の生徒」
先生の背中についてリビングに入って行くと、キッチンからこちらを振り返る女性が目に入った。
部屋はとても暖かく、カレーのいい匂いが立ちこめている。
「こんばんは、いらっしゃい」
マミさん、と呼ばれたその女性は、柔らかで可愛らしい笑顔を浮かべていた。
「椎名です、お邪魔します…」
ぺこ、と頭を下げると、マミさんも一緒に頭を下げ、…わたしの後方に目線を送る。
「あら。…おひとり?」
「そうだよ。…あ、さっきの電話で、言わなかったっけ。ゴメン」
「やだ、哲哉くんたら。放送部の生徒を連れて行く、って事だけ言うから、…たくさん来るのかと思った。お皿、こんなに出しちゃったわ」
マミさんはあはは、と愉快そうに笑って、食器の山を棚に片付けている。
「この人が、兄貴のお嫁さんの、マミさん。…翔平のお母さんね。」
「あ、はい」
「…よろしくね、椎名さん。…哲哉くんがいつも、お世話になってます」
「こちらこそ…」
わたしはもう一度頭を下げてから、マミさんの笑顔を見つめた。
…優しそうな人。
春山先生の、お義姉さん…。
白井さんの言っていた話が本当なら、…この人が、月子ちゃんの心のケアを担当しているという事になる。
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