1140人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
『大学で児童学を学んでいた』なんて固い言葉が結びつかないほど、マミさんはとても人懐っこく、穏やかな雰囲気を持っていた。
この人に笑いかけられたら、心を閉ざした子供も、その扉をすんなりと開けてしまうかもしれない。
「荷物、貸して」
春山先生は、わたしのコートと鞄を受け取ると、奥の和室へと入って行った。
その間にキョロキョロ、と辺りを見回すと、リビングの方に人影がある事に気付く。
伸び上がって覗くと、その人物はこたつに突っ伏して、眠っているようだった。
…あっ…!
…きっと春山先生のお兄ちゃんだ。
わたしはさらに背伸びして、顔を覗こうとした。
…顔、見たい…っ。
隣には、ちょこんと寄り沿って座る翔平くんの小さな背中がある。
テレビ画面には、アニメの映像が流れていた。
お兄さんの寝姿に目を奪われ、そわそわしていると、すぐ側のダイニングテーブルの上で、ゴト、という音がした。
見ると、盛り付けられた美味しそうなチキンカレーから、湯気が立っている。
「サラダももう出来てるから、二人とも手を洗ってらっしゃい」
和室から戻り、袖をまくりながら、はあーい、と返事をした春山先生が、とても可愛らしく見えた。
最初のコメントを投稿しよう!