-2-

8/8
1140人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
 『大学で児童学を学んでいた』なんて固い言葉が結びつかないほど、マミさんはとても人懐っこく、穏やかな雰囲気を持っていた。  この人に笑いかけられたら、心を閉ざした子供も、その扉をすんなりと開けてしまうかもしれない。 「荷物、貸して」  春山先生は、わたしのコートと鞄を受け取ると、奥の和室へと入って行った。  その間にキョロキョロ、と辺りを見回すと、リビングの方に人影がある事に気付く。  伸び上がって覗くと、その人物はこたつに突っ伏して、眠っているようだった。  …あっ…!  …きっと春山先生のお兄ちゃんだ。  わたしはさらに背伸びして、顔を覗こうとした。  …顔、見たい…っ。  隣には、ちょこんと寄り沿って座る翔平くんの小さな背中がある。  テレビ画面には、アニメの映像が流れていた。  お兄さんの寝姿に目を奪われ、そわそわしていると、すぐ側のダイニングテーブルの上で、ゴト、という音がした。  見ると、盛り付けられた美味しそうなチキンカレーから、湯気が立っている。 「サラダももう出来てるから、二人とも手を洗ってらっしゃい」  和室から戻り、袖をまくりながら、はあーい、と返事をした春山先生が、とても可愛らしく見えた。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!