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話を聞き終えた白井さんは、しばらくの間、宙を見て考え込んでいた。
わたしは頭の中を整理しながら、ヒロシくんが録ったテープのこと、そして更科くんがゆかり先生を脅して合いカギを作らせたこと、さらにわたしが保健室で見たヒップバッグらしきものについて、説明した。
「それが、本当にヒロシくんの物だったとして…」
白井さんは首を傾げた。
「確かに、萌ちゃんのお友だちが言うように、…小林先生がヒロシくんを襲う動機が、弱いような気がするね」
白井さんは、深く納得したような顔をしている。
彩加の名推理は、白井さんから見ても筋が通っているらしい。
「それに、…おそらく警察は、小林先生のことをとっくに調べ上げてる。
未だに名前が上がっていないということは、すでに容疑者から外していると思うよ」
「…どうしてですか」
「警察は、…今回の放火事件の犯人は、この学校の関係者であると睨んでいるんだ。柔道の有段者である小林先生を、調べないはずがない」
「え…ちょっと、待ってください」
わたしは驚いて言った。
「学校関係者って、…どうしてそんな…」
「犯人が防犯カメラに映らない、ということは、…そいつが、学校のどこにカメラがあって、どこを向いているのか、把握しているってことだろう?」
「あ…」
わたしは口に手を当てた。
「内部に詳しくない人間が、10か所以上もある防犯カメラに映らずに校内を徘徊することは、不可能だ。
…犯人が幽霊でもない限り、ね」
幽霊、という言葉を聞き、わたしが固まると、それを見た白井さんがあはは、と笑った。
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