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コンコン、と運転席の窓を叩くと、シートに横たわっていた身体がむっくりと起き上がった。
目を擦り、わたしの顔を見て、嬉しそうに笑う。
パワーウインドーを下げると、白井さんは窓枠に腕を乗せ、にょきっと顔を出した。
「こんばんは、萌ちゃん」
「こんばんは…」
「よかったよかった、どうしても今日中に食べてもらわなきゃいけないものが…」
言葉が途切れたかと思うと、えぐひょん!という大きなくしゃみが響き、わたしの身体がビクッと跳ねた。
「うわ、さむ。…萌ちゃんそれ、中、パジャマでしょ。入りなよ、車。あったかいから」
わたしが躊躇していると、白井さんは笑って、
「大丈夫だよ。…萌ちゃんに手なんか出したら、祐希くんに嫌われちゃうだろ。…何もしないから、入って」
その時、ひときわ冷たい風がびゅうっと吹き付け、わたしは慌てて、助手席側に回った。
「はい、これ」
シートに腰掛け、ドアを閉めたとたん、目の前に白い箱が差し出された。
「…なんですか…?」
「ナマ物だから、すぐ食べてね」
わたしは戸惑いながらも箱を受け取った。……寿司……ではなかったみたいだ。
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