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持ち手部分を開けて覗くと、ふんわりと甘い、いい香り。
「…わ」
箱の中には、美味しそうなフルーツタルトが二切れ、入っていた。
「レナちゃんから。…祐希くんと萌ちゃんに、だってさ」
「え…」
「あの店の裏にある、ケーキ屋さんのなんだ。…めちゃめちゃうまいって、評判なんだよ」
わたしはもう一度、箱の中を覗いた。
…おいしそう…。
つやつやのゼラチンが表面を覆っていて、中のフルーツを瑞々しく包み込んでいる。
「あ、でも…。祐希くん、もう寝ちゃったかな?」
「…そうですね、寝てたみたいなので、…明日の朝イチで、一緒に戴きます。ありがとうございます」
笑顔を向けると、白井さんはくすっと笑った。
「…なんですか」
「萌ちゃんて、分かりやすいね。…さっきまで怒った顔してたのに、タルト見たら、機嫌直っちゃって」
「……」
だって、…めちゃめちゃ美味しそうなんだもん…。
「どうして怒ってたの?」
白井さんがハンドルに肘をつき、首を傾げる。
「勝手にメールして、勝手に待ってるから…」
わたしは口をとがらせた。
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