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風は何度も何度も姫の行く手を遮ろうとしました。
針のような雨粒に打ち抜かれ、風に身を切られてもその足が止まることはありません。
そして姫の眼差しは常に前にありました。
雨も風も姫を立ち止まらせるどころか、下を向かせることすらできないのでした。
雷鳴が轟きます。
木々たちが騒ぎ出すのを姫は見逃しません。
けれど、考える間はありませんでした。
凄まじい光と轟音が辺りに響きました。
焦げた臭いが鼻をつきます。
僅かな静寂が周りを包みました。
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