姫と嵐

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そんな風景の中、動くものがあります。 姫です。 ゆっくりと上体を起こし、何事も無かったかのごとく立ち上がりました。 姫は死んだ瞳でただ前方一点を見つめます。 いつしか雨は上がり、風はどこかへ吹き抜けていきました。 雷鳴も聴こえません。 姫の見つめるその先から、暗くぶ厚い雲が晴れていくのが見えます。 嵐は去りました。 花や草木がこの時を待っていたかのように、一斉に芽吹き始めます。 小鳥たちのさえずりが耳に心地よく響きます。 柔らかな陽だまりが、無言で歩き去る姫の背中を優しく撫でました。
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