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コウが私の腕を優しく撫でている。
でも不思議と嫌な感じはしなくて…。
コウの優しい手の感触が心地よく感じて。
智の感触も出来事も私から消えていく。
もっと、もっともっと触って欲しいと思った。
でもそんなこと恥ずかしくて言えない。
だから心にも思ってない事を言ってしまった。
「も、もういいよ。大丈夫だから」
私はそう言うと腕を引こうとした。
…そうじゃないのに。
もっと触れて欲しいのに素直になれない。
コウは私の心の中がわかるのか、腕を離さなかった。
そして私の顔を見るなり微笑みながら言った。
「だめ。ちゃんと消毒しないとだろ?」
…コウはズルイ。
いつもは意地悪で嫌な奴なのに…こういう時に優しくて。
自分の気持ちがわからなくなる時がある。
でも確実にコウの優しさに私の心は解される。
また私の心が一歩コウに近づいていく。
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