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自嘲の笑みを浮かべた刹那ーーーー
『紅(アカ)……おいで、上がっておいで、紅…』
「!?」
誰かが、優しく私の名前…紅、と呼んだ。
驚いて辺りを見渡す。けれど、そこには
確かに私一人しかいない。
…………誰?
思わず上を見上げるも、相変わらずの闇。
「だ、誰……?」
『僕だよ。紅、おいで。此所は怖くなんてない。さあ…』
聞きなれない声。私に親しみを持つかのような話し方。
諭すように問いかけるその声は、確かに上からのもの。
「やだ…誰?誰なの?」
誰かも知らずについていけるわけがない。
…………私を何処に連れていくの?
地獄、天国、黄泉……。
考えるほどに、声との距離が離れていく。
『さぁ、紅……僕に掴まるんだ』
刹那、水を掻き分けるように差し出された腕。
「!?誰!?」
ついていってはいけない。この腕にしがみついてはいけない。
………そう心では分かっているのに、私は恐る恐るその腕に指を絡ませた。
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