5人が本棚に入れています
本棚に追加
ーーーーー二度とは聞かせない
沖田は意味を含んだ笑みで男を見る。
その冷酷な笑みは…まさに氷。有無は言わせない。
「し、し、知らんけども…15くらいの女子(おなご)や!なんや面妖なもんきとった!」
「面妖な着物…?」
沖田は川面に再度目をやる。その“面妖な着物”とやらを見てみたいのだ。
ーーーもしや、異人か?
いや、異人ならば一人で異国を出歩き、ましてや川に落ちるような真似はしない。
……それに…もし異人なら、沖田達を目の敵にする“あいつら”が嗅ぎ回るだろう。
異人にしろ上代の民にしろ、早く助けねばならない。
「あんた…刀、持ってて」
「ちょ、えっ…!」
状況を把握しきれていない男に半ば強引に刀を預けると、沖田は欄干から勢いよく川に飛び込んだ。
「あ、あんたなにして……!!!」
ざわめく民衆をよそに、沖田は流れが激しい鴨川を潜る。
砂と泥で濁る川では、人影は見当たらない。
異人らしきものも見当たらないし、第一自分がどこにいるのかも分からない。
上がれば遥か沖合、何てこともあるかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!