序章

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だが、後何年世話になるか分からないこの京で溺死事件だなんて、少なくとも薄気味悪い。 沖田は次第に苦しくなる呼吸に眉をひそめると、砂で濁る川の深くにに体をくねらせた。 ーーーこの腕に抱えた時に、どうかその異人まがいの女子とやらが、息を止めていないことを祈って。 (僕に、死体を抱く趣味なんて、ないんだから、ね…!) 無意識に伸ばした腕。必ずしも女子がここにいるとは限らない。だが沖田は懸命に腕を伸ばす。 …………刹那 女子のものとおぼしき細い腕が、彼の腕を抱いた。 (いた…!?) 顔は見えない。頼りになるのは、己の腕にしがみつく一本の腕。 ーーーー妖の類か、あるいはその女子か。 沖田は、いっきに水面へと駆け上がった。
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