『熱』

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「…暑い」 「………」 そう言いながらも体重を預けて来るもんだから歩き難いし、制服の袖から伸びた肌と肌が触れ合ってそこからじわりと熱さが広がるようだった。 「お前って、体はあついのな」 「はあ?」 「だっていつも暑さなんて感じてませんって顔じゃん?だから冷たいのかと思った」 「…馬鹿か、つうかそう思うなら離れろよ。重い」 我ながらどうでもいい嘘を付く。触れ合って熱を放つ場所も、軽い身体の重みだっていつだって手放したくないと思っているのに。 「バカって言うな!」 「あー?馬鹿に馬鹿って言うのは猫に猫って言うのと同じだぜ?」 「あ?え?猫、は、猫って言うよな?」 「そうそう、よかったなぁ、みさきぃ、ひとつ賢くなっただろ?」 「あ?お、おう!賢くなった!」 「ククッ」 「?、何で笑うんだよ?」 「んー?別にー?」 ああ、お前は何でそんなに気持ちわりいぐらいに可愛んだろ。猫みてえな目をキラキラさせて笑うから、いまだに触れ合ったままなのにもう何も言えなくて。 「コンビニ寄るか」 「おう!あ………俺、金ねえわ…昨日ゲーム買っちまった…」 「お前ってマジ計画性ねえよな」 「…うっせ」 わざとからかうみたいに髪を撫でた。 「チッ…しゃーねえな、アイスぐらい奢ってやるよ」 「マジ!?お、俺!ソーダのやつな!」 「はいはい」 「へへ」 なあ、みさき。俺達は後何回、こんな風に夏を過ごせるだろう? 「お前にも少し分けてやるからな!」 「…俺の金なんですけどー」 ああ、…本当に暑い 「よし!急ぐぞ!」 焼けるようなその熱が苦しくて 「はあ?何で態々汗かきに行くんだよ?」 「いいから!」 「チッ、わかったから引っ張んな」 いっそ溶けて消えろ。そう願う 「さるー!」 この熱を失うぐらいなら 「…うっぜ」 今すぐ二人で溶けてしまえば幸せだから
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