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本当に何もない白一辺倒の世界。
けれど目の前には白とは対極に位置する黒をその身に纏った少女がこちらを見ていた。半分黒の翼と半分白の翼を持つ少女が何かを期待しているような瞳でこちらを見ていた。
少女の手にはとても分厚い、まるで殴ることを想定して作られたかのような鈍器もとい、本を持っている。
もう片手には少女には似つかわしくない大鎌が握られていた。
「ごめん、ごめん。紹介がまだだったね。わたしは神。数多の世界を統治する創造主と呼ばれているよ」
特に求めてもいない自己紹介の挙句、自分を神などと名乗る少女はきっとウソが下手な天然なのだろう。
「神、ね。それで神様とやらは俺をどうしたいわけ?」
「いやあね、生き返らせてあげようと思って」
そんなことを突然言われても反応に困るだけで、返答なんて出来るはずもない。
「何か見返りがあるのだろ」
不思議と出た言葉がそれだった。
きっと感覚が狂ってしまっているのかもしれない。
「見返りね……そうね、強いて言うなれば異物を世界に投入すると世界はどんな風になるのかという観察をしたいのかもね」
「なるほど」
納得してしまっている自分に驚くこともない。自分はやはりどこか頭のネジが数本なくなっているのかもしれない。
「わたしが作った世界の中で君の世界は中々に独自に文化を遂げた。その中でわたしが作った世界とほとんどそっくりと言っていいような世界をテーマにしたゲームがあった」
神が何を言おうとしたのか何となく俺には理解できた。
「剣と魔法が織りなす世界、アーケミヤ」
神より先に俺が神の言葉を横取りする。
「そう。そして君はその世界を現実のように愛していた。中々出来ないものだよ。世界を愛するのは」
ふう。
ため息。
神様でもため息をつくことがあるのだとそんなことを考えながら、どこか気恥ずかしさで心がいっぱいだった。
「だから、見てみたい。君の愛した世界に似た世界で君はどういう生活を送るのか」
「随分御執着のようで」
「わたしは君を結構気に入っているからね。だから君がこんなところでただの魂だけの存在になってしまうのは本当に惜しいと思っている」
神に気に入られていた割には随分ひどい人生だったと思う。
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